"Flying", The Art of College by Louise Forbush

コラージュ・アート(ルイーズ・フォーブッシュ)

"RETURNING" by Louis Forbush, Collage Art, Bay Area, CA, USA
"RETURNING", Courtesy: Louis Forbush

ルイーズさんのアトリエに入った途端、壁に掛けられた作品に吸い込まれました。彼女の作品の中を流れる気の流動性のようなエネルギーがとても魅力的だったのです。 温かな太陽の光を背景にした雲や風の静謐な動きを思わせる作品もありました。  どの作品も多くの興味をそそる形や動きで構成されていて、その意味が気になって仕方がありません。

日本の文字とコラージュされた紙とを重ね合わせた彼女の作品は、古い毛筆書きの和紙の一部が使われていて、源氏物語や三十六人家集などを思い起こさせます。  彼女の作品には和文化の他、西洋のイメージや言葉が混じっているものもあります。

Self Portrait, Louis Forbush, Collage Art, Bay Area, CA, USA
Self Portrait, Courtesy: Louis Forbush

ルイーズさんの作品は一見抽象的に見えます。  しかし、色んな形やちぎられた縁(ふち)、文字や不思議なものを辿っていくと、曲がった枝や雲、鳥、街並みなどが浮かび上がってきます。  

多くの人は、本来意図されていないものを抽象的に捉えようとする傾向があり、抽象的なものの中から自分にとって意味のあるものを創造します。  しかし、言葉はどうでしょうか。認識可能な言葉、例えば “faith(信念)”、”kindness(優しさ)”、”gratitude (感謝)”のような認識可能な言葉や、認識不可能な文字は、私たちの意識と相互作用することを意味しているのでしょうか?  潜在意識?

"ONCE UPON A TIME" by Louis Forbush, Collage Art, Bay Area, CA, USA
"ONCE UPON A TIME", Courtesy: Louis Forbush

例えばこれは、1800年代後半に英語に翻訳された日本の童話の小さな本から着想を得たもので、美しいイラストがちりばめられた紙に印刷されています」と、ルイーズさんは窓際の作品を指差しました。  母が幼い頃、日本の家族からプレゼントされたものです。数十年後、私はその美しいページを自分の芸術のために破りたくなかったのですが、ボストンの古い本屋さんでもう一冊を見つけることができたのはラッキーでした。さらに探してみると、それ以来、これらの古い童話をさらに6冊見つけ、そのうちの断片を私の作品に取り入れています。

"MOON" by Louis Forbush, Collage Art, Bay Area, CA, USA
"MOON", Courtesy: Louis Forbush

物語や言葉やイメージの根底にある意味を知らなくても、視覚的に理解し、鑑賞することができるものがたくさんあります。  暖色系の色を中心に、オレンジ、金色の黄色、古紙のベージュ、原稿、楽譜などの色が、ターコイズやインディゴブルーなどの小さな色で補なわれていて、満足のいく調和を生み出しています。  暖かみのある金色が彼女の作品をうまくコントロールしています。彼女は1988年に日本に住んでいた時に、そのような稲を見たそうです。

"LEAF" by Louise Forbush, Collage Art, Bay Area, CA, USA
"LEAF", Courtesy: Louise Forbush

コラージュ作品の作成

それぞれの作品には、深さ2インチの正方形の木の箱を使用し、上面は滑らかな”Claybord”で覆われています。  彼女は、ちぎったり、切ったり、折ったりした小さな紙を何層にも重ねて、彫刻的な形を作ります。  時には紙の素材の他に、住いの中に見つかりそうなもの、例えば石や織り込まれたファイバー、象牙のかけら、絹や麻の糸などをミックスすることもあります。  それぞれの作品の中には関連性のないものが多く含まれていながら、そこに線や角度、色、質感などの融合が生まれて一つになっているように見えるのです。

「それぞれの作品に“動き”が感じられることがとても重要です。  」とルイーズさんは、言います。

「あなたはどこかに行って、そしてどこからか戻ってこなければなりません。これは私が大学で学んだ音楽にも当てはまりますし、私の作品にも当てはまります。 」 

ルイーズさんはよく二つの質問を受けます。

作品が完成した事はどうやってわかるのですか?
ルイーズさん:「私の”体の中が教えてくれるのです。」

作品作りにはどれくらいかかりますか?
ルイーズさん:「30年!」

"IN THE MIST" by Louis Forbush, Collage Art, Bay Area, CA, USA
"IN THE MIST", Courtesy: Louis Forbush

インスピレーション

ルイーズさんの主なインスピレーションの源は、何度か日本を訪れ、紙が作られているのを見て、日本のあらゆるものを吸収したことにあります。最初の旅は1985年、7代続く旅館に泊まり、日本アルプスに登り、日本食の素晴らしさに触れ、日本の美意識を吸収し始めた時でした。 そして1988年、サンフランシスコの会社を辞め、京都に1年間住むことを決意。

日本に滞在し、日本文化を学ぶことを目的とした1年間の滞在は、人生を変えるものとなりました。 紙に魅せられたルイーズさんは、京都で何世紀もの歴史を持つ伝統的な紙漉きの技術を学びました。京都の北にある紙で有名な小さな村、別所で紙がどのように作られているかを見て、あちこちにある素晴らしい古紙の店を見つけ、その宝物を持ち帰りました。1992年と2016年と更に旅を重ね、さらに珍しい素材に出会うことができました。

Art Studio, Louis Forbush, Collage Art, Bay Area, CA, USA
Courtesy: Louis Forbush

素材そのものがルイーズさんにインスピレーションを与えてくれます。
「買うのをやめられない! 一生分の素材を持っているのに、もう一枚を買わずにはいられないのです。 和紙の縮緬紙、日本古来の巻物、着物を染めるための型紙、柿渋で染めた温かみのある紙、そして私のお気に入りの典具帖(てんぐちょう:カゲロウの羽に例えられるほど薄い紙。美術品の修復などに使われる。)は、柔らかな夕日や水辺の光の感触を表現するのに使っています。」

「ある時、岡山の紙屋さんのアトリエで、戸口に吊るされていた藍色の大きな紙が目に留まり、「買えませんか?」と尋ねると、そのお店の男性は「ああ、それ、持っていていいですよ。」と言ってくださいました。 紙屋さんは私がどんな芸術をしているかを知って、彼のお父さんの工房に行って、貴重なものから古紙をたくさん取り出して持ってきて、それを私に下さったのです。人は何て寛大で親切な存在なんでしょう。」
(編集追記:これは和紙工芸家の梅田剛嗣さんという方のお店に訪れた時の話です。)

日本での1年間を経て、12年間草月流の生け花をディクソンKosho先生に師事。 生け花からは、コントラスト、色、質感、形、大きさ、焦点、線、そして最も重要なことー左右非対称のバランスの取り方を学びました。 これが私のアートのトレーニングでした。

アーティストについて

ルイーズさんの作品は、NV州リノのStremmel Galleryとカリフォルニア州バークレーのACCI Galleryで展示されています。

ウェブサイト:Website

(訳/編集:右松明美)