By Luis Amado, Chocolatier, Chef, Food Specialist, USA

チョコレートの芸術性(ルイス・アマド)

小さなお菓子でも、これほどまでに多彩な技術と熟練の技を駆使して作られる高級デザートの世界は、本当にユニークなものです。一般的には研究室にしかないような化学の知識を駆使して、基本的な素材を高度な技術で操ることで、新しい食感や構造、デザインを生み出しています。料理が成熟すると、塩味も甘味も、大胆で個性的な味を生み出すことができるようになります。また、型にはまらない素材に彫刻したり、描いたりするために必要とされる芸術性は、賞賛に値します。特にチョコレートの職人の世界で、人々が賞賛するようなシルキーで魅惑的で、洗練されたチョコレートを作るには、精密さと芸術性が求められます。

By Luis Amado, Chocolatier, Chef, Food Specialist, USA
Courtesy: Luis Amado

今回は、世界的に有名なシェフであり、マスターショコラティエでもあるルイス・アマド氏にお話を伺うことができて光栄です。彼の作るチョコレートは芸術品であり、ペストリーの世界では他に類を見ないものです。インタビューでは、彼の貴重な経験や若い料理人志望の方へのアドバイスなども語っていただきました。彼がどのようにして料理界のトップに上り詰め、マスター/ショコラティエになったのか、その彼の人生を垣間見たいと思います。

Q: メキシコで育ち、その後アメリカに移住されたそうですが、どのようにしてチョコレートの達人になられたのでしょうか? そのきっかけや、修行の様子、ご自身の経験などを教えてください。

アマドさん: 
私は10代の頃、料理やデザートを作るのが心から好きだと感じていました。私は祖母の料理を手伝ったり、いつもテレビの料理番組を見ながら育ちました。そして18歳になった時、アメリカに来て料理学校に通うことを決め、資格をを取得しました。両親は私の学費を援助してくれましたが、学費を払うために多くの犠牲を払なければならなかったので、決して楽なことではありませんでした。

私は、学生の誰より一番早くクラスに来て、一番最後に調理実習室から帰る毎日を送りました。
そうして料理学校では、私は幸運にもグランド・ラピッズ・コミュニティ・カレッジの代表として、地元や全国の様々な料理コンテストに選ばれました。集中型のトレーニングや、若い生徒に与えられる料理コンクールの更なる技術や経験の数々がとても素晴らしいと思いました。

その後、私は優秀な成績で卒業でき、メキシコに戻る代わりに、24歳の時にエグゼクティブシェフとしての仕事のオファーを受けました。エグゼクティブシェフになる前は、皿洗い、ラインシェフ(=キッチンを任されないシェフ)、パントリーシェフ(=主にサラダなどの冷たい料理を準備するシェフ)、そしてシェフのアシスタントとして働きました。

私はその後も勉強を続け、一般教育学部の学士号を取得しました。調理師学校を卒業して2年後、ベルリンで開催された国際料理オリンピックに出場しました。料理の大会にはまってしまい、エグゼクティブシェフの仕事をしながら、ほぼ毎年どんどん大会に出場するようになりました。

1998年、キッチン業界の多忙な仕事を辞めることを決意し、給料を大幅にカットして、現在のミシガン州マスケゴンにあるCulinary Institute of Michiganと呼ばれる料理学校で講師として働き始めました。私はそこで22年間働き、最終的にはベーキングとペストリーのプログラムディレクターになりました。教育者として働く中で、チョコレートへの情熱を感じるようになり、多くのチョコレートショーで優勝を続け、そしてチョコレートをもっと追求するために毎年様々な国を旅しながら、学生にチョコレートのクラスを教えるようになりました。

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Courtesy: Luis Amado

Q: あなたのチョコレートの作品は、どれも芸術作品のようですね。あなたのインスピレーションは何ですか?また、あなたのチョコレートはどこで買えますか? 

アマドさん:
インスピレーションの源は決まっていません。毎日、描画、絵画、彫刻などのアートを見たり、瞑想して新しいアイデアを生み出そうとしています。私は革新的なことが好きで、違うことに挑戦することを恐れていません。高校時代は技術的なデッサンの授業が大好きでした。家にはいつもノートがあって、新しいアイデアを描いていますが、質問に答えるとすれば、私のインスピレーションは主に私の想像力から来ています。私はチョコレートを販売していません。世界中のショコラティエに私独自のアプローチでチョコレートを作る技術を教えています。私は教えることに情熱を持っていますし、その経験も豊富です。私は売ることには興味がなく、私にとって教えること以上に満足できるものはないと言っていいでしょう。

Q: チョコレートを準備する際に、味や外観、食感などの基準となる重要なポイントを教えてください。 

A: 自分が持てる最高の材料を絶対使わなければなりません。ゴミでレシピを始めるとゴミになってしまいます。私はクーベルチュールだけを使っています。クーベルチュールとは “true chocolate “の正式名称で、カカオバターの割合が多く、多くの製品に見られるような水素添加油やワックスを使用していないチョコレートのことです。見た目については、私は表現を重視しています。すっきりとしたラインで、細かい装飾が施されているのを見るのが好きです。チョコレートは輝きが必要な時には輝き、つや消しの仕上がりの時は輝きを感じさせないものが好きです。私は鮮やかな色よりも自然なダークブラウンの色が好きですが、私のフォロワーも私の色のテクニックが好きなので、私の好みのスタイルだけにこだわるのではなく、彼らが喜んでくれることをしようとしましたが、表現はユニークで重要です。私は、人々が思うほどこだわり屋ではありません。しかしチョコレートに指紋がついていたり、テンパリングが適切に行われていないチョコレートを見るのは嫌いです。

テキスチャーは非常に重要で、チョコレートのテンパリング、取り扱い、保管の仕方が適切であるかどうかで決まります。成功しているショコラティエは常にこのことを考えながら仕事をしています。

Q: チョコレートは人々の健康にとても良いですが、通常、健康効果のためには、どのような材料を使い、どのようなものを避けますか?

A: 私はすべての材料を可能な限り自然なものにしたいと思っています。人工的な色は使わず、可能な限り天然のココアバターのみを使用しています。チョコレートに含まれる砂糖の量を制限して、はちみつに置き換えるのもいいと思います。ショートニングや変性ワックス、加工された材料は絶対に使わないようにしています。

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Courtesy: Luis Amado

Q:チョコレート作りで想い出深い話を聞かせてください

アマドさん:
ほぼ毎日のように作っていますが、大規模な創作や特別な日のためにチョコレートのデザインを依頼されることもよくあります。どのような時も思い出に残るものです。国際コンクールや中東の王様のために作るのと同じくらいのプライドを持って、近所の人に分けてあげるためのチョコレートを作っています。コンクールの3時間前にチョコレートボンボンを作り、それでも最優秀賞を受賞したことは、私にとって最も思い出深い経験の一つです。2007年、チョコレートコンクールの準備をしていた時に、24個のトリュフを特別な形で作らなければなりませんでした。不運にも、ナイフでケガをし、午前4時に救急車で運ばれたため、普通なら6時間かかっていたはずのチョコレートをキッチンに戻ってきて1時間もかからずに仕上げなければなりませんでしたが、それでも全国のチョコレートコンクールでベストオブザショーを受賞しました。これは忘れられない思い出です。

Q:アマドさんの料理の経験はとても素晴らしく興味深いです。例えば、国内外の料理コンテストで審査員をされていますが、料理コンテストの審査員をする際にどのような姿勢で臨まれていますか? また、審査する料理には何を求めていますか?

アマドさん:
まず緊迫感、決断力で、料理は二の次です。衛生面でのスキルも見ますが、競技者の意図を理解し、また彼らがどれだけ要求に応えられたかを理解するようにしています。私は私的な見解で、非常に建設的なアドバイスをするようにしています。

適切なオリジナリティを求めています。もし彼らがクラシカルな料理を出したとして、そこに革新すべきものがなかったら、それは準備を怠ったということですから、私はそのことを批判します。

Q: 世界各地でマスタークラスを開催されていますね。チョコレートに関して、文化の違いによって人々の嗜好がどのように異なるのか、気づいたことを共有してもらえませんか?

アマドさん:
ほとんどの場合、ヨーロッパではアメリカよりもダークチョコレートの方が好まれているという結論に達しました。アメリカは甘いものが好きで、もちろんミルクチョコレートも好きです。アルゼンチンはキャラメルとホワイトチョコレートが大好きです。残念ながら、アメリカでは、本当の意味での良いチョコレートは評価されていませんし、少なくともチョコレートコーティングや人工的なフレーバーのチョコレートより評価されないのが一般的です。私は、ヨーロッパといくつかのラテン諸国の人々は、チョコレートについてより良い理解を持っているか、あるいは多くのものを食べて育っていて、それ以下のものに落ち着くことはないと感じています。

By Luis Amado, Chocolatier, Chef, Food Specialist, USA
Courtesy: Luis Amado

Q:世界に誇るチョコレートアカデミーを作っていますね。このアカデミーについて教えてください。

アマドさん:
私のプライベートのクラスは4人までです。生徒は私のモダン・テクニックの殆どを学べますし、プライベートクラスだからこそ、生徒が得意にしたい分野に集中することができるのです。  クラスは私の自宅の下の階にある個人スタジオで行われます。充実した学習体験を提供するための機材や技術はすべて私が用意しています。  昼食は私たちが提供します。彼らは参加証明書、エプロン、私の詳細なレシピとチョコレートのスケッチが載っているワークブックが渡されます。またビデオのオンラインデータにアクセスすることができます。私は教えることが大好き。私のチョコレートへの情熱を他の人に伝えることが大好きです。  生徒さんは、完全にその人だけにカスタマイズされたプライベートクラスを希望するなら、それも喜んでやります。それ以外の場合は、私のクラスは4人までの生徒で構成されています。

 教えるトピック

  •  最低10の装飾テクニックを含むボンボンのエクステリアデザイン
  •  大量に形づくる、収益性の高いビジネス用チョコレートの製造
  •  私が得意とする様々なレイヤリングテクニックを駆使したチョコレートインテリアのデザインと構築
  •  賞味期限の管理
  •  ガナッシュを作る際にバター以外の油脂を使用したガナッシュの調合
  •  コスト管理と製法の開発
  •  自宅でチョコレートビジネスを成功させるには
  •  キャラメルやリキッドを中心部に入れる製造

Q: 様々な分野で成功を収めているシェフとして、料理人志望の青年へのアドバイスをお願いします。

アマドさん:
時は金なり。あなたが一生懸命働き、あなたがやっていることを楽しむことを望んでいない限り、この分野に入ってはいけません。それは料理についてだけではありません、このキャリアは非常にストレスが多く、キッチンは熱く、人はあなたにどなり、事故も頻繁に起こります。;世界中で他の大部分が楽しんでいるとき、あなたは長時間そんな中で調理することになります。心地よいベッドを手に入れて帰宅後はゆっくり休んでほしいと言いたいです。

また、何事にも全力を尽くすこと。失敗から学び、常に良い食材を使って仕事をし、時間通りに出勤すること。制服は常に清潔に保つこと。エプロンの上で手を汚さないこと。タバコを吸わないこと。学ぶことをやめないこと。
あなたの上司に、毎年継続した教育クラスに送り込んでくれるよう頼むこと。関連書を沢山読むこと。

そして人には、自分がされたいと思うような接し方をしてほしいです。

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Courtesy: Luis Amado

Q: 読者に伝えたい、近い将来の活動はありますか?

アマドさん:
年に2回発行される世界的に有名なシェフのための雑誌「So Good Magazine #24」に記事を掲載する予定です。www.sogoodmagazine.com をご覧ください。また、9月からはオンラインでチョコレート講座を開講する予定です。

<最後に>
アマドさんが率直に回答して下さったお蔭で、彼の職業、彼がどれだけ努力されてきたかがよく理解できました。
彼の生き方や経験は感動的です。競争が激しく、秀でたものを要求される料理の世界に光を当ててくれる存在だと思いました。

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